ファイロファックス(FILOFAX)の歴史【システム手帳サロン(番外編)】

銀座・伊東屋システム手帳サロンで開催されたファイロファックス(FILOFAX)社によるイベントの中で、本国より来日されたファイロファックスマーケティングディレクターであるのジュリア・ランハインさんにファイロファックスの歴史を語っていただきました。

今回のトークショーでは限られた時間の中でのお話でしたので断片的な部分もありますが、2017年3月24日(金)~4月9日(日)までの期間、同じく銀座・伊東屋にて開催された 【Facts of FILOFAX】で展示された内容と合わせると繋がる部分が多くありましたので、トークショーの内容と Facts of FILOFAXの内容を併せてファイロファックスの歴史について記載したいと思います。

一点補足をしておきますと、同じくトークショーで登壇された平和堂堀口様よりお聞きしたのですが、ファイロ社は創業から約100年と長い歴史の中で途中空襲でファイロ社が焼けてしまった過去もあり、創業当時の歴史に関しては全てが整備されているわけではないようです。世界各国のファイロ社に眠っている歴史的な資料などもまだまだ多くあり、現在整備されている段階でもあるとの事です。

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ファイロファックスの歴史

ファイロファックスの歴史は、1920年にイギリス軍司令官のディズニー大佐の仲介により、ロンドンで印刷業を営んでいたウィリアム・ラウンス氏が、アメリカ・Lifax社製のパーソナルオーガナイザーをイギリスで販売する事から始まります。正式な創業は1921年で当時の社名はノーマン&ヒル社(NORMAN & HILL)となります。

このパーソナルオーガナイザーは、エンジニアのマニュアルを小さくまとめる事をコンセプトとしたもので、現在のシステム手帳と同じように6穴が空いておりますが、リングは付いておらず下の写真のような形で束ねるタイプのものでした。

LIFAXと呼ばれるオーガナイザー。6穴のサイズ規格は現在のバイブルサイズと同じだとか。

その当時は紙に書くと言う文化が主流で紙が大量に有ったようで、とにかくその紙をコンパクトにまとめる事がLIFAXのコンセプト。今で言う分厚い技術本のようなマニュアルを整備するための物でした。また、その当時は企業向けでの商売がメインだったようです。

創業時はロンドンの古いストリートに建てられた小さなオフィスからのスタートしており、全てが手作りで製造されていました。


FILOFAX創業時のオフィス。

その後、ノーマン&ヒル社はLIFAXと別のラインで、FILOFAXブランドにて現代の形であるリング式のシステム手帳を開発します。


これが今回のイベントでも展示されていたファイロファックス初期(1920年代)のシステム手帳。形状含め現在のシステム手帳と変わらないデザインですね。
一番初期のシステム手帳はシンプルで一枚の革にリングがついているのみのものであったようで、時代とともにポケットを追加するなどの進化が進んでいきます。


システム手帳発売初期のもので一枚革でリングがついているのみのシンプルなものだった。


その後、ポケットのついた形状のタイプが開発されていく。

少し話がそれますが、その当時の財布は紙幣が中心でコインをあまり使わなかった時代のようで、財布に対してシステム手帳の機能が加わっていったイメージであったともお話をされていました。

この当時は、当初の製品を販売するLEFAXとリング式のシステム手帳であるFIROFAXの二つのブランド(製品)で営んでおりましたが、その後FILOFAXに注力する事になり、これまでの企業向けの戦略から個人向けの戦略に切り替える事になります。当時行われていた生産業者向けの展示会でファイロファクスを推し、1930年にFILOFAXを商標登録。この時期から正式にFILOFAXブランドを推した形での運営が具体的にスタートします。

FILOFAXが拡大していく中で、1939年の第二次世界大戦中にはイギリス・サンドーハストにある王立陸軍士官学校の標準装備としてファイロファックスが採用されます。当時兵士たちはファイロファックスのことを、ラテン語で「いつも一緒」と言う意味の「vademecums」と呼ぶほど常に欠かせない装備だったと言われています。

さて、その翌年1940年ドイツによるロンドン空爆でノーマン&ヒル社が焼失します。

その際に同社設立時からの秘書、グレース・スカールが自分のシステム手帳に顧客リストを残しており、手帳を毎晩家に持ち帰っていたことから被害を最小限に食い止める事ができ、その後も営業を続けることができました。グレース・スカールはその後の功績によりファイロファクスの社長になりました。

その際にグレース・スカールが使用していたシステム手帳が2つのリングが付いたタイプのものです。


写真左上に乗っているタイプのものがグレーススカールモデル。

このグレーススカールモデルは前回のFacts of FILOFAXにてレプリカが展示されていました。


1996年に創業75周年を記念して復刻されたもの。

また今回のイベントでも2つのリングが付いたタイプのシステム手帳が展示されておりました。

イベントの為にグレース・スカールが使用していた本物を持ってきてくれたのかと思いましたが、これは本人が使用していたものではなく別の方が使用していたシステム手帳との事でした。※本人が使用していた物は現在探している状況のようです。

(私自身これまで、このタイプのものはグレース・スカールだけが特別に使っていたものであって、市場に出回っているものでは無いと解釈しておりましたがそうでは無かったようですね。)

この当時は紙に書くと言うことが主流で2つのリングが付いた形状が需要にマッチしており一般的に使われていたようです。


後から教えいてもらい気づいたのですが、今回展示されていた古い手帳の中でも左下の黒い手帳は2つのリングタイプのものです。


上から見るとリングが2つついている事が分かります。


別の場所に飾られていたこちらもよく見るとリングが二つついていますね。

ファイロファックスの歴史において上記グレース・スカールの話は有名ですが、ファイロファックスには伝説とも言えるべき話が他にも存在します。
1944年にはノルマンディー上陸作戦の将校ウィリアム・ノーマンは、胸に当たった銃弾の貫通を胸ポケットに入れていたバイブルサイズのファイロファックスが防ぎ命を救われました。終戦直後、彼はロンドンのオフィスでファイロファックスの修理を頼み戦場での体験を語ったと言われています。

尚、日本でバイブルサイズと呼ばれているサイズが、現在・英国および世界ではパーソナルサイズと呼ばれています。1940-1950年ごろは業務用途が多くバイブルと呼ばれていましたが、その後個人ユーザーが増えたこともあり、パーソナルサイズと呼ばれるようになったそうです。


こちらは1950年代のパーソナルサイズ(バイブルサイズ)のファイロ。


こちら、年代は不明ですが革の模様が非常に美しく、綺麗な状態で保存されています。純粋に欲しいです。

その後のファイロの歴史としては以下の歴史を刻んでいきます。

  • 1975年:デイビット・コリションとレズリー・コリション夫妻により通販会社 PoketFAXが設立されファイロファックスのメールオーダーが開始される。このメールオーダーのPoketFAXがノーマン&ヒル社最大の取引先となる。
  • 1976年:イギリス軍とネパール王室軍の合同登山隊がファイロファックスをデータブックとして装備し、エベレスト登頂に成功。
  • 1980年:ノーマン&ヒル社から正式にファイロファックスに社名を変更。同タイミングで本社をロンドンの高級ブランド街であるノエルストリートに移転。
  • 1984年:ファイロファックスが日本で初めてのシステム手帳の販売を開始します。当時初めて日本に上陸したファイロのシステム手帳がWinchester(ウィンチェスター)となり、日本でもシステム手帳ブームを引き起こす。
  • 1989年:オフィスの机上で使いやすい大判のデスクサイズとジャケットのポケットにも入れられる小型のポケットサイズの販売が開始。
  • 1990年:ハリウッドの映画監督や俳優・女優たちがファイロファックスを愛用。ファイロファックスを題材とした映画「ファイロファックス(邦)/Taking Care of Business(英)」が制作され当時のファイロファックスブームが映画によって描かれる。
  • 1993年:バイブルサイズよりも書き込みスペースの広く、携帯することも可能なA5サイズの発売を開始。
  • 1996年:ミニサイズの販売を開始。ファイロファックス75周年を記念し、ロンドンのデザインミュージアムにて展覧会を開催。
  • 2001年:ビジネスの書類整理にも便利なA4サイズの販売を開始。
  • 2002年:バッグ・ブリーフケース・PDAケース・ノートPCケースなど手帳以外のアクセサリーの販売を開始。
  • 2003年:英国国旗であるユニオンジャックをデザインしたモデル「United Kingdom」の発売を開始。
  • 2004年:全世界で200冊限定の「KING」の発売。英国の純銀製品の品質保証マーク(ホールマーク)をモチーフとした王冠とライオンの型押しでデザインされている。
  • 2005年:全世界で200冊限定の「fILE OF FACTS」の発売を開始。ファイロファックスを象徴する「f」が大胆にデザインされカバー裏には「真実」を表す石であるガーネットが埋め込まれている。
  • 2006年:創立85周年を記念して85周年ロゴを刻印した記念モデル「ETON85」「PIAZZA85」を販売。
  • 2011年:ロンドンを代表するファッションデザイナー、アリス・テンバリーとのコラボによるシステム手帳のデザインコレクションを発表。
  • 2012年:タブレットなどのeアクセサリー類の販売を開始。
  • 2015年:リングノートにシステム手帳の機能をプラスした、用紙を自由に並び替えられるノート「ファイロファックスノート」の発売を開始。および、ノートとシステム手帳が融合した「クリップブック」の販売を開始。
  • 2016年:ファイロファックス創業95周年を記念し伝説的モデルであるWinchesterをを復刻した「Winchester2016」を発売。同モデルは200冊の限定モデルとなり、それぞれにナンバリングがされている。


復刻されたウィンチェスター2016

さて、そんなファイロファックスにも若い人には単に手帳(通訳では「手帳」と言ってましたがスケジュール帳の事を指していると感じます)以外の何物でもないという思考が生まれ、世界で問題になった時期がありました。また、デジタルの時代が到来し、デジタルとアナログが戦っているかどうかという議論が生じた時期もあります。(これは現代でもそうかもしれません)

考えとしては、システム手帳は人を入れられる家のようなもので、自分の知らないところまで様々なパーソナル情報を入れられるもの。単なる手帳とは異なる用途があるといったコンセプトで開発しているものだそうです。


(システム手帳は人を入れられる家。こんな家に住んでみたいですね。発想が素晴らしい)

また、年表から見ても分かる通りファイロファックスは100年の歴史の中で時代に合わせた商品を開発しています。「デジタルも使い・アナログも使う」「役割が違うので、お互いの良いところをコラボして使うべき」と言うのがファイロファックスの考え方で、インターネットにつながるものは情報が世界中に届くが、システム手帳は誰にも邪魔されない自分だけの情報だとも仰られていました。

尚、ファイロファックスの商品開発では本当に多くの素材・サンプルを見ながら検討を進めるようです。

具体的には100種類のプロトタイプから製品化されるのは2製品ほどだそう。

また開発する際は、今の需要はもちろん昔の作り方を参考にすることが多く、昔の製品が改めて新製品として開発されることもあるようです。

今年発売されたChesterが昔のWinchesterをベースに作られており、100年以上前のヨーロッパ地域で使われていた型で革の表情を作成しています。 ファイロファックスの初期の伝統的な製法を忠実に再現し復刻し、かつポケットの配置など現代の使い方に合わせた工夫がなされています。

時代は変化しているけど使い方は昔と変わらない要素もあり、昔のものを蘇らせたとしても現代の使い方に受け入れられることが多いとの事で、今後も昔の製品を考えつつ開発を続けるとの事でした。

ファイロファックスの強みはシステム手帳をゼロから開発し100年という長い歴史をシステム手帳とともに刻んできたこと。そして過去からの学びを現代の開発にしっかりと活かしているという事であると改めて感じ取ることができました。今後も素晴らしいシステム手帳の発売を心から楽しみにしています。

私としては、グレース・スカールモデルの復刻版をぜひともお願いしたいですね。

最後に

今回記載した内容は、下記銀座・伊東屋でのイベントにて得た情報を元に記載しております。

【Facts of FILOFAX】
http://www.ito-ya.co.jp/store/itoya/gitoya/recommend/2017/03/002256.html

【システム手帳サロン】
http://www.ito-ya.co.jp/store/itoya/gitoya/recommend/2017/10/002660.html

最後になりますが、ファイロファックスの歴史に関して知る素晴らしい機会を作っていただいた伊東屋及び日本総代理店である平和堂の皆さまに心から感謝を申し上げます。

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