順調に増え続ける万年筆。気づけば保有万年筆は120本を越しました。
相変わらず私自身の万年筆愛は高まるばかりですし、最近「どの万年筆がオススメですか?」といった質問もいただくようになりました。
今回は初心者が万年筆を選ぶ際に知っておきたい基本的な選び方についてお話をさせていただくとともに、おすすめの万年筆を紹介します。
目次
万年筆の選ぶ際に気をつけるポイント
万年筆を選ぶ際にどんなことに気をつければ良いかポイントをお話しすると、
- 使う用途と字幅
- ペン先の素材(金・鉄)・ペン先の性質(軟・硬)
- 軸のサイズと軸の重心
- 軸の素材
- デザイン
- 価格
などが挙げられます。
それとともに書き手の筆記癖も重要な要素であるため、一概に万人に対してこの万年筆がお勧め!と言えないのが万年筆の特徴です。
またそれぞれのブランド・種類によって違う特徴があるため同じような性質の万年筆を購入したとしても好みが分かれます。同じ14金のペン先でもパイロットのFとプラチナのFだとプラチナの方が硬い書き味みたいな。
それでは一つ一つを見ていきます。
万年筆を使う用途と字幅
万年筆を選ぶ上で1番大切なのはどんなシーンで使いたいかという事。
仕事上でノートやメモを取る、手帳に細かな文字を書き込む、日記を書く、手紙を書く、宛名書きをするなど筆記するシーンは様々です。手帳なら細字、宛名書きなら太字と用途によって字幅を変えるのが一般的です。
※私の用途としては、ノート、手帳、習字など書き物をする際は基本的に万年筆を選ぶことが多いです。万年筆で字を書く行為が好きなのかもしれません。
用途が決まると字幅を選びますが、万年筆の字幅は以下のように設定されています。
F:(ファイン・細字)
FM:(ファインミディアム・中細字)
M:(ミディアム・中字)
B:(ブロード・太字)
BB:(ブロードブロード・極太字)
※これ以外にも様々な字幅やペン先がありますし、メーカー独自のペン先もあります。
手帳など細かな文字を書く必要がある場合は細かな文字の書ける「F(細字)」や「EF(極細字)」をお勧めします。
また、メモ書きなど速記が必要な場合や、宛名書きなどでの使用には少し太めの字幅をお勧めします。
MやBなど太めのペン先は、細字と比べると滑らかで気持ち良い筆記ができるとともにインクの濃淡を味わう事が出来ます。
万年筆のぬらぬらとした書き味が楽しい・気持ちの良いという定義では太めのペン先になりますが、実用頻度を考えると細字万年筆の方が高いです。
大きな字粒で筆記される方であれば万年筆の特性が楽しめる中字・太字をお勧めしますが、細かな文字を書くことが多い場合は細めの筆記が可能なFをチョイスする事をお勧めします。
1文字をクローズアップすると、
中地や太字など、字幅の太い万年筆で筆記すると、万年筆ならではのインクの濃淡が表現され味わい深い文字を書くことが出来ます。
私はFを普段使いの基準にして、筆記を楽しみたい時にMやBなどの太字、また柔らか目のペン先を使っています。
シャープペン・ボールペンと万年筆の字幅比較
0.5mmシャープペン・0.7mmボールペンと万年筆の字幅の差。
この字幅比較だと、国産万年筆であるPILOT社のカスタム845Fが0.7mmのボールペンの字幅と近いですね。
なお万年筆の字幅は各メーカーによってバラバラで、また同じ種類の万年筆でも個体差があるケースもあります。
同じFでも一般的に国産の万年筆は細く、海外ブランドのFは太い字幅になることを頭に入れておくと良いです。上の写真でもTWSBIのBよりもモンブランのMの方が太くなっていますね。
また万年筆の取扱店では基本的に検討する万年筆の試筆をさせてもらえますが、その際は試筆用紙だけでなく、普段使用するノートや手帳に書かせてもらうことをお勧めします。
さらには紙の種類によってインクの乗り具合も異なりますので、店頭の試筆用紙だと丁度良かったけど、普段の手帳だと太すぎたというケースが生じてしまいます。
保有万年筆の字幅
保有万年筆の字幅。左側のEFでもこれくらいの差が出ます。
万年筆のペン先にはどうしても個体差が出てしまいますので、その個体差を楽しむくらいの余裕があった方が良いのかもしれません。
手帳など細かな文字を書きたいケースではパイロット、プラチナ、セーラー万年筆など国産ブランドの細字か極細字をチョイス、太字を楽しみたいのであれば国産の太字か海外ブランドの中字以上の字幅を選ぶ事をお勧めします。
ペン先の素材(金・鉄)・ペン先の性質(軟・硬)
ペン先の素材・性質というのは、万年筆のペン先には14金や18金・21金などの金で出来ているもの(金ペン)と鉄やスチールで出来ているもの(鉄ペン)があります。
また、筆記時にしなりの強い柔らかなペン先から硬めでガチガチなペン先などがあります。
一般的には金ペンの方が柔らかく鉄ペンが硬い書き味と言われていますが、鉄ペンでも軟らかい書き味のものも多くあります。
続いてペン先の種類の中には軟調ニブと呼ばれるものがあり、ペン先が筆圧によってしなりやすくなっているものがあります。
軟調ペンは力加減によって味のある文字が書けるのが特徴ですが、筆圧の強い方が軟調ペン先の万年筆を使用すると、ペン先が柔らかすぎてしなり過ぎてしまい、まともに文字が書けないですし、場合によっては壊してしまう可能性もあります。
万年筆の筆記は基本力を入れずに書くことですが、人それぞれの個性が出ますし、力を抜くよう矯正するにも時間が掛かりますので、まずは自分の筆圧にあったペン先を選ぶことをお勧めしたいです。
ちなみに筆圧の高い方は硬めのペン先の方が書きやすいでしょう。
逆に筆圧の弱い方はどのような万年筆を使ってもOKのように感じます。
私の場合、習字を行なっている事もあり出来るだけ筆圧ゼロを目指して力を入れないように書くようにしています。
力を抜いて書くと、これまで硬めのペン先と思っていたものが柔らかく感じるケースもありますので、硬い・柔らかいの感覚は人それぞれだと感じるようになりました。
自分の筆圧がどれくらいか知りたいときは、PILOT社などで定期的に行われている筆圧測定で調べてもらうのがお勧めですが、それが難しい場合は店員さんに書き癖を確認してもらうのが良いでしょう。
軸のサイズと軸の重心
続いて軸のサイズと重心です。
万年筆というとペン先ばかりに意識がいってしまいますが、ペン先と同じくらい重要なのが軸です。
細い軸、太い軸、短い軸、長い軸などありますので自分に合った軸を選ぶ必要があります。
写真はペリカンのスーベレーンというシリーズの万年筆(左からM300、M400、M600、M800、M1000)ですが、これだけの軸のサイズがあります。
また、軸の重心も選ぶ際のポイントになります。
万年筆はボールペンと比べると寝かして書く筆記具ですので、キャップを軸の後ろに付けてさらに重心を高い位置(ペン先から見て後ろ)にもっていくケースもあります。※首軸の素材を変えて低重心設計されている万年筆もありますので、どの重心が理想なのかは一概にはいえませんが。
一般的には太くて長めの軸の方が、長時間筆記に向いていると言われています。
私自身もさまざまなサイズの万年筆を保有していますが、私自身にもこの話は当てはまっているようで、腰を据えて筆記したいときには大きめの万年筆を持つケースが多いです。
軸のサイズは、持つ人の手の大きさや感覚によりますので、どのサイズが理想かは難しいところです。
万年筆専門店で試筆させてもらっても長時間試筆が出来るわけでもありませんし、その時々で感覚が変わってしまうため判断しづらいはずです。
最初の一本は中間クラスのサイズで万年筆を始めてみて、そこから小さめの方に進むのか、大きなものを持つのかを決めるのが良いです。
※私のような鈍感な人間だと、その日その日によって持ちやすいものが異なりますので困りものです。
万年筆の軸素材
万年筆の軸の素材にもいくつかの種類があり、主に次の5つに分類されます。
エボナイトで作られたものやその上に漆塗りしたもの、樹脂系(レジン・プラスチック)、セルロイド、木、金属といったものです。
軸の素材はペン先に比べるとあまり目立たないポイントですが、ペン先以上に重要な要素だったりします。
落ち着いた環境でちょっとした筆記程度であればどんな素材でも違和感なく使えますが、長時間筆記、暑く汗をかきやすいなど環境の悪いところでの筆記の際は出来るだけ滑りにくいものを選びたいです。
素材について語り始めると長くなってしまいますので要約しますが、現在一番主流になっているものは樹脂系の素材で作られたものとなります。樹脂系の素材は軽く加工が容易で、年数経過による変化が少ないことが特長です。
私が推しているのはエボナイトで作られた軸です。
エボナイト軸は、緊張したり暑くて汗をかきやすい環境でも滑らずにしっかりとグリップできるので重宝しますが、その分、値段が高くなってしまいます。
また、書きやすい・書きづらいという判断ポイントだけでなく、愛着を持てるかどうかも大切です。
軸の中には木軸といって木で作られた万年筆やマーブル調が美しい万年筆など様々。愛着を持って長く愛用できる万年筆を選びたいですよね。
万年筆の値段
もう一つ大切なのがお値段です。
万年筆は価格の幅が非常に大きく、安いものでは1000円という安価なものから高級なものでは10万円を超えるものまで。(中には100万を超える万年筆もありますから驚きます)
最初はどの価格帯の万年筆を選べば良いか悩んでしまうわけですが、大きく以下の考え方でよいかと思います。
万年筆がどんなものかを試してみたい方
パイロットのカクノという1000円の万年筆、もう少しお金を出しても良いのであればプラチナから発売されたプロシオン(5,000円)をお勧めします。
いずれもペン先はスチールペンですが、万年筆ならではの書き味を楽しむことができますしコンバーターを取り付けることにより様々なインクを使うことも可能です。
カクノ
ペン先サイズはEF・F・Mの3種類が発売されておりますが、他の万年筆の字幅と比べて細くEF・Fは紙によって若干カリカリとした書き味になりますので、M(中字)を選ぶのが良いでしょう。
また、最近ではスケルトンのカクノが発売され、スケルトンカクノをデコレーションすることも流行っています。
万年筆というと敷居が高いように感じてしまいますが、カクノであればこんな楽しみ方も気軽に出来るのが良いですね。
プロシオン
プロシオンはプラチナが5年かけて開発したと言われる万年筆で、鉄ペンでありつつも非常に柔らかく滑らかな書き味を得られます。
1年以上放置してもインクの乾かない仕組みなど、プラチナの技術がしっかりと凝縮された万年筆です。カクノの5倍の5,000円というお値段ではありますがそれだけの価値はあります。
また、プロシオンは2019年の日本文具大賞にも受賞された万年筆です。
本格的に万年筆を使っていきたい方
本格的に万年筆を使っていきたい方には、パイロットから発売されている「カスタム92」という万年筆をお勧めします。
サイズ感などペン全体のバランスが良いこと、14金の本格的なペン先で適度な硬さとコシのある書き味で、手帳やノートなどで細かく筆記する際など実用で重宝しています。
また、カスタム92はボディがスケルトンであるとともに、ボディ全体がインクタンクになっており大量のインクを入れられます。
透明軸ですから常にインク残量が確認でき、普段使いとして安心して使えるとともに、入れたインクの色が見えるのは気分が上がります。
10,000円〜15,000円程度の予算で、本格的な万年筆を一本持ちたいと相談を受けると、私は必ずカスタム92をお勧めしています。
また、カスタム92をお勧めする理由は、パイロットの万年筆は品質に高い定評があり個体差によるハズレが本当に少ない万年筆だからです。
まとめ
万年筆の値段は安いものから高いものまで幅広くありますが、いきなり高いものを購入しても違いが分かりにくいので、高いものを購入する必要はありません。
海外ブランドの万年筆はオシャレですし値段に大きな差があるため、(こっちの方が良いんじゃないか・・・)みたいな思いも生じると思いますが、書き味においては正直差を見出せないと思います。
以上、万年筆の選び方として参考にしてください。
別記事にて、私が推すおすすめ万年筆の記事を書いていますので、合わせてご覧ください。
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