- 数ある万年筆の中で、どの万年筆を選んだら良い?
- 自分にとって本当におすすめな万年筆はどれだろう?
- おすすめと書かれている記事を読んでも正直よくわからない
本格的に万年筆を愛用していきたいユーザーにとって気になるところですね。
万年筆はきちんとメンテナンスしてあげれば一生物の道具として使える筆記具です。
親から子へ受け継がれる万年筆、半世紀以上も前の万年筆が今も使われていることも少なくありません。
私自身趣味で120本以上の様々な万年筆を愛用しています。
愛用している万年筆の中でも書き味と書きやすさという観点から実用頻度の高い自信を持っておすすめできる万年筆と、一生物として愛用していきたい万年筆をピックアップしました。
最高の一本を見つける参考にしてもらえればと思います。
目次
おすすめ万年筆にもジャンルがある
万年筆と言っても1本1000円程度で購入できるものから、10万円以上もする万年筆もあります。
ペン先の素材も「鉄ペン」であったり「金ペン」であったり、またボディ(軸)にもプラスチックのものもあればエボナイト素材のもの、さらにはエボナイト素材の上に漆を塗った万年筆など様々ですね。
万年筆の良し悪しは値段で決まるものではありません。
しかし1000程度で購入できる万年筆と数万円の万年筆では、シーン・用途によってはどちらもおすすめと言えますが、そもそもの作りや素材からして異なってきます。ネットショップで人気だから書き味が良いというのもちょっと違います。
これらを一緒におすすめと言っても違う気がしますので、今回は金ペンに絞って紹介します。
また、おすすめの観点として、私が実際に使用している中での「書き味」と「書きやすさ」を優先し、その次にデザインや素材などの観点からもお話をします。
それぞれが素晴らしい万年筆で、正直これが一番のおすすめ!と選べないのが本音ですが、万年筆を購入する際の検討材料にしてもらえたら嬉しいです。
他のサイトでは「おすすめランキング」としてランキング形式で掲載されている記事を多く見かけますが、どれもお気に入りの万年筆であるため、ランキング付けは難しいことご了承ください。
万年筆における「書きやすさ」と「書き味」とは?
万年筆における書き味、書きやすいという定義は複雑です。
人によっては書きやすい万年筆も、他の人によっては書きづらくもなる。また同じ人が使ったとしても筆記シーンによっては書きやすくも書きづらくなることだってあります。
個人的に書きやすい万年筆の定義は、以下のポイントが挙げられます。
- 長時間筆記していても疲れづらい万年筆
- 汗をかきやすい状態でも滑らずに持つことができる軸
- 高速筆記時のインクの追従能力
- たくさんのインクが入り、インク切れの不安の少ない万年筆
- インクが乾きづらく、少し放置していても書き出しからスムーズにインクが出る万年筆
- グリップした時の安心感(重量バランスやデザインの工夫による)
また万年筆の書き味は、文字を筆記する際の筆圧や筆記角度、筆記速度によっても異なってきます。万年筆で例えられる書き味だと以下の様なポイントが挙げられます。
- 筆記時の引っ掛かりがなく滑らかに筆記できる書き味
- ペン先のしなり(好みによる)
- インクフローの安定度
書き味というのは、筆記シーンや好みによって異なる部分も大きいので、今回はどんなシーンでの書き味というのをできる限り付け加えて紹介しますね。
万年筆が書きづらい・書きにくいと感じた際の処置方法
万年筆はさまざまな筆記具の中でとても書きやすい部類の筆記具ですが、持ち方を間違ってしまったり、筆圧などが合わないと書きづらい・書きにくいと感じてしまう事は否めません。
また、インクとの相性・筆記用紙との相性によっても万年筆の書きやすさは変わってきます。
ペン先の向きを意識する
ボールペンや鉛筆など一般的な筆記具は基本どんな持ち方でも筆圧でも筆記できることから、それと比べると万年筆は難しさを感じてしまうかもしれません。
万年筆を書きづらいと言われる方々の中で多いのが、ペン先の向きが筆記面に対してずれてしまっているケース。筆記面に対して水平に真っ直ぐ向く様に構えてあげると書き味が一気に変わりますよ。
以下は間違った持ち方の例です。
万年筆の正しい持ち方は、下の写真の様に紙面(筆記面)に対して、ペン先を水平に当ててあげることが基本。
もし、万年筆が書きづらいと感じている方は、ペンの持ち方を見直してみてください。これだけで一気に書きやすくなりますし、ペンの持ち方も修正できるのでおすすめです。
インクを変えてみる
万年筆用のインクは、何千種類と星の数ほど存在しますが、それぞれ粘度・表面張力が異なる事から、インクの出方・筆記時の滑らかさが異なってきます。
同じ万年筆にて、今まで使っていたインクとは異なるインクに入れ替えたら書き味が激変したという事もザラです。
万年筆に興味を持ちだすと複数のインクを持つことになるかとは思いますが、自分の中のスタンダードインクを決めておくと、万年筆自体の調子が悪いのか、それともインクの問題なのかを判断できるようになります。
私が個人的なスタンダードインクとして使用しているのは、クロス社のブルーブラックインクです。
このインクは裏抜けしやすく筆記用紙を選びますが、圧倒的にぬらぬらと気持ちよく筆記できるインクです。
書き味に違和感を感じた場合は、自身のスタンダードインクに入れ替えて書き味を検証し、インクの問題なのか万年筆自体の問題なのかを切り分けをすることもポイントです。
筆記用紙を変えてみる
ノートや紙など筆記用紙によっては万年筆との相性が悪く、普段通り筆記しているのに時々インクが出ない事が生じます。
筆記中、普通に筆記出来ているのに突然一瞬だけインクが出なくなるので、私はこの現象をスキップしてしまうと呼んでいます。
髪質によってはスキップが頻繁にあり、書きづらい・書きにくいに影響することもあります。※万年筆に適した紙と言われている紙でもこういった現象が起きることがあります。
万年筆を疑う前に、違うノートや紙に変えるなどの対策をしてみてください。
持ち方・インク・筆記用紙に問題なければ調整師に見てもらう
正しい持ち方をしているのに、また、スタンダードインクを使用しているのにも関わらず、インクが出づらい、引っ掛かって書きづらいと感じるケースでは、ペン先の状態に問題があるケースもあります。
そういった場合は、万年筆専門店や万年筆の調整師にペン先の状態を見てもらう事をお勧めします。
おすすめ万年筆15選
万年筆をおすすめする私自身の観点について紹介してきました。続いては私が愛用している万年筆の中でおすすめ万年筆を15本紹介します。ぜひ購入の参考にしてください。
細字での一般筆記におすすめ | パイロット カスタム92 F
普段使いの細字の万年筆という観点においては、パイロット社5号ペン先のFが書き味として気に入っています。
バランスの良いボディのサイズ感とあわせ、紙面へのあたりは柔らかくも適度な硬さとコシのある書き味は、手帳やノートなどで細かく筆記する際など実用において重宝しています。※細かな文字を書く際、ペン先は柔らかすぎないほうが良いです。
複数あるパイロットの5号サイズペン先の中でカスタム92をチョイスしたのは、やはりボディがスケルトンであるとともに1.2mlという大量のインクを入れられる回転吸入機構が採用されていることからです。
大量のインクが入れられ常にインク残量が確認できるのは、普段使いとして安心して使えるとともに、入れたインクの色が見えるのは気分が上がります。
10,000円〜15,000円程度の予算で、本格的な万年筆を一本持ちたいと相談を受けると、私は必ずカスタム92をお勧めしています。
最強の便利さ!パイロット キャップレス 木軸 M
便利さという観点で外せないのがパイロット社のキャップレス万年筆。
片手でノックしてペン先を出し、片手でノックしてペン先を収納するという、キャップをはずす・閉めるという作業がないのは、例えば電話しながら筆記したいシーンなど片手が使えないときに本当に重宝します。
見た目は非常に小さなペン先ですが、そのサイズ感からは信じられないような柔らかい書き味はなんとも言えません。
キャップレスはペン先FとMを保有していますが、少し太めのMの方が普段のサッと出してサッと書くといった殴り書き用途に適しています。
万年筆っぽく無いデザインの万年筆をチョイスしたい方は検討に入れたいですね。
実用頻度No1 プラチナ万年筆#3776センチュリー B
普段使いの万年筆の中で、最も実用頻度が高い万年筆であるプラチナ万年筆#3776センチュリーシリーズのB(太字)。
#3776シリーズB(太字)の書き味について簡単に説明すると、ペン先のしなりは少なく硬め。
それでいてペンポイントの研ぎのバランスが素晴らしく、筆記時のぬらぬら感が非常に高い書き味です。
そのぬらぬら感は、筆記時に「インクの上をペン先が滑っているような感覚」です。
書き物を純粋に楽しみたいとき、高速筆記が求められて書き殴っていくシーンなどの実用用途で重宝します。
現在#3776シリーズのBはナガサワとのコラボモデルあるセンスケ(センチュリースケルトン)とブライヤーモデル2本の合計3本保有しており、気分によって使い分けています。
この#3776センチュリーシリーズにおいてはとにかくB(太字)が好きで、それに合わせてボディも購入している感覚ですね。
細かく丁寧な文字を書きたいときに | パイロット カスタム912 PO
ペン先が下向きに曲がっている特殊なペン先が特徴的なPO。PO = ポスティングと呼びます。
特徴的なペン先からは、超極細であるが「とめ・はね・はらい」のバランスの取れた筆跡を書き出すことが可能。
私は趣味で習字をしていますが、細字で丁寧な文字を練習したいときに重宝するのが、このパイロット社のカスタム912POです。※パイロットの営業さんに習字用に一本欲しいと相談したらPOを紹介いただき購入に至りました。
一般的に万年筆は、字幅が細くなれば細くなるほどカリカリとした書き味になりますが、912POは極細でありつつも非常に滑らかな書き味です。(もちろん太字と比べたらカリカリします)
それとともにペン先が適度に柔らかくしなるため繊細な筆圧をきちんと筆跡として表現できるのが素晴らしく、表現力という観点でも素晴らしい万年筆だと感じています。
手帳などに細かな文字を書きたい方、硬筆習字する方にはぜひ保有いただきたい一本ですね。
習字の清書でも活躍する信頼の一本 | パイロット カスタム845
私が保有する万年筆の中で、丁寧な文字を書きたい時の使用頻度が高く活躍してくれるの万年筆がパイロット社のカスタム845です。特に習字の清書では大変お世話になっています。
習字で使用する万年筆として私がこだわるポイントは、細字でありながらもインクフローが潤沢であること。
繊細な筆圧の強弱にきちんと反応してくれて、とめ・はね・はらいを筆跡として表現してくれる万年筆です。
また、習字は集中力が求められるため、どうしても手に汗をかきやすくなってしまいます。緊張したり夏場暑くて汗を書きやすいシーンでも、滑りづらいボディ性能も求めます。
カスタム845のF(細字)は、そういった要望を全て受け止めてくれる万年筆。
バランスの良い大型15号サイズのペン先は、フローの良さはもちろん、ほどよく筆圧に反応してくれる柔らかさを持っていますので、筆圧表現がしやすい万年筆です。※フレックスなど軟調系の柔らかさではありません
また、エボナイト+漆塗りで仕上げたボディは汗をかいていても滑りづらいため、習字の清書など緊張した局面でも持ち手にしっかりとフィットしてくれます。
なお、パイロットの18金15号サイズの万年筆はF、M、BBの3本保有しており(ボディは一位の木と槐)、習字ではFをメインとして使用していましたが、Mの安定感(万年筆これ一本で良いじゃん感)、BBのぬらぬら感などと、どの字幅も素晴らしい活躍をしれくれます。
選ぶにあたって同じ18金15号サイズのペン先がついている槐や一位の木などとも迷いましたが、エボナイト+漆仕上げの万年筆のフィット感が素晴らしいため845をピックアップ致しました。
今回は外しましたが、槐や一位の木も軸が育っていくという観点から愛着は高いですし一生物であることは間違いありません。
文字遊びに重宝 | カスタム743FA(フォルカン)
万年筆というと、ペン先が柔らかく弾力性に飛んだ書き味ってイメージありませんか?
私自身が万年筆に対してそのような印象を持っていたのですが、こちらで紹介するカスタム743FA(フォルカン)は正しくイメージ通りの書き味の万年筆でした。
フォルカンは軟調ペン先と呼ばれる非常に柔らかいペン先が取り付けられており、筆圧のコントロールによって細い筆記線と太い筆記線を筆記することが可能です。
筆記感に癖があるため向き不向きはありますし、慣れも必要ですが、フォルカンじゃなければ筆記できない文字があるのも事実。
私の場合は普段使いというよりも、文字を書くことを楽しむ際に利用することが多い万年筆です。
おしゃれが過ぎる!仕事で使いたい万年筆 | LAMY2000
とても小さなペン先が付いていますが、これもれっきとした14Kのペン先で見た目からは想像できない心地よい書き味です。
書き味はスルスル・サラサラ。
私が保有しているのはEFと細字幅ですが、細字万年筆にありがちなカリカリとした引っかかり感がありません。特に力を抜いて流すように筆記する際はとても気持ちよく筆記できます。
また、書き味は万年筆らしい書き味ですが、デザインは万年筆っぽくないデザイン。仕事などで万年筆をさりげなく使いたいときに重宝します。
LAMY2000は EF、F、M、Bが一般的に発売されていますが、国産万年筆と比べて筆記線は太いので、手帳用途など細かな筆記線で書きたいのであればEFで問題はありません。
最強の実用万年筆として重宝 | モンブラン マイスターシュテュック ルグラン146
最強の実用万年筆として146はやはり外せません。
どれだけ筆記しても疲れにくく書きやすいバランスの取れた絶妙なボディと、高速筆記にもしっかりと追従するインクフロー。
そして数ヶ月使用しなくても乾かないといった、基本スペックの高さは素晴らしいとしか言いようがありません。
146の歴史は古く今から70年以上も前の1949年に発売が開始されました。
その長い歴史の中で様々な改良がなされており、年代ごとによって書き味も異なってきます。
私が保有している146は現行モデルですが、ペン先はガッチリとした硬さがあり、実用に適した書き味になっています。
他の万年筆では味わえない絶対的安心感 | モンブラン マイスターシュテュック 149
モンブラン マイスターシュテュック149を手にして、筆記体制に入った瞬間から感じられる絶対的な安心感は、他の万年筆では味わえない独特の感覚があります。
一般的な万年筆と比較して大きめのボディとペン先のデザインがそういった感覚にさせるのだと思います。
がっしりとした硬めのペン先から潤沢なインクフローがしっかりと追従してきますので高速筆記にも耐えられますし、149を使用する際は万年筆を手に添えるだけの感覚で持ちますので、長時間筆記でも疲れにくいのが特徴です。
※149は一般的な万年筆と比べて大きく太めのサイズになるので、自然と添える感覚の持ち方になります。
私は細字と中字の149を保有していますが、国産の万年筆と比較すると一段太い字幅となります。
細かな字とか意識せず、ノートに書き殴る、純粋に書き物を楽しむときの道具としてこれからもずっと愛用していきたいですね。
モンブラン マイスターシュテュック 149というとステータス的な見方をされがちですが、あくまでも道具としての149が素晴らしすぎると感じています。
1950年代から販売という超ロングセラー万年筆にはそれだけの理由があることが感じ取れる万年筆です。
この万年筆でしか表現できない筆跡 | セーラー 長刀研ぎ
長刀研ぎの特徴は、止め跳ね払いなどが多い漢字を最も美しく筆記するために開発されたペン先であること。
この万年筆で筆記した筆跡は他の万年筆で筆記した筆跡とは明らかに異なり、この長刀研ぎにしか表現のできない筆跡があります。
唯一無二の存在であることから今回チョイスしました。
私がはじめて長刀研ぎを使って際に感じたのは、万年筆という筆記具を使い始める前に想像していた「万年筆ってこういう書き味だろうな」とイメージしていたものとドンピシャな書き味であった事です。
また、一般的に金ペンと呼ばれる万年筆は14金・18金が中心ですが、長刀研ぎは21金ペン先というセーラー万年筆ならではの仕様が採用されています。
この21金ペン先の書き味も特徴的で、紙面にペン先を当てた時の柔らかいタッチはなんとも言えない素晴らしいものがあります。
ちなみに長刀研ぎは、「ペンを寝かせると太い線が書け、立てると細い線が書ける」という特徴があります。公式サイトでも記載されていますが、これはあまり意識しないほうが良いと思います。
確かに筆記線の太さは角度で変わってきますけど角度を変えて書くのは現実的ではありません。
普通に自身の書きやすい角度で筆記すれば、日本の漢字文化に適した特徴のある素晴らしい筆跡が残せる万年筆と考えた方が良いでしょう。
書き味の素晴らしさに感動 | S.T.Dupont ラインD
私が愛用してきた万年筆の中で、一番感動を覚えたのがS.T.Dupont ラインDの書き味です。
デュポンといえばハイブランドならではの気品のあるデザイン、金属加工技術や漆仕上げなどに目がいってしまいがちですが、自社製造のペン先にも素晴らしい実力が兼ね備えられており、書き味という観点から個人的に一番好きな万年筆です。
紙面にペン先を当てて滑らせた時の、絶妙なタッチ感というのでしょうか。あたりはとてもソフトでありつつしなりという観点では、特別柔らかいわけでもなく硬いわけでもなく、とにかく絶妙。
語彙を無視して伝えてよいのでしたら、究極にエロい書き心地です。
ラインDはデュポンの中でも一番の定番ラインですが、実用を重視した道具として正統派な筆記具であるとともに、ラグジュアリーブランドならではの気品を備えた万年筆。
スーツの胸ポケットに挿せばビシッとしまりますし、それでいて書き味が素晴らしければどこにでも持ち歩きたくなるものです。
唯一無二のふわふわでぬるぬるな書き味を楽しむ | カスタムウルシB
替えの効くものと効かないものがある。
そういった観点から考えると、カスタムウルシの書き味は替えが一切効かない唯一無二の存在だと感じています。
30号サイズという超大型ペン先、そしてその中でB(太字)は筆記抵抗を一切感じさせないふわふわとした書き味。
ペンポイントがきちんと紙面に向き合ったときは、紙面の上に油が引いてありその上を滑っているような感覚に陥ります。
柔らかすぎるペン先の筆記感に、最初は馴染めなくて使いこなすのに苦戦するかもしれませんが、力を抜いて無抵抗の中で筆記することがこれだけ素晴らしく楽しいのかと教えてくれたのもこの万年筆。
また、書き味だけではありません。
万年筆がその時々の自分のコンディションによって書きやすかったり、書きづらくなったりするケースがあります。緊張しているとき、気温・湿気の高いときなどは、手が汗ばんだり油っぽくなってしまい軸をグリップし辛くなることもあります。
エボナイトに蝋色(ろいろ)漆仕上げを施したカスタムウルシは、そういったシーンにおいても手にくっつくような感覚があり無駄な力を入れることなく筆記に専念する事ができます。
他の万年筆の軸に使われている素材が良いとか悪いとかではなく、とにかく漆仕上げされた万年筆を手にした時の感触が別格なのです。
カスタムウルシは筆記を楽しむための最高の一本です。
研ぎ澄まされたデザインと弾力に飛んだ書き味 | ファーバーカステル 伯爵シリーズ
伯爵というのはファーバーカステル社の高級ライン。貴重な素材を使用した万年筆が発売されており、私はグラナディラとスネークウッドの2本を保有しています。
このシリーズの素晴らしさは、伯爵シリーズの名にふさわしい貴賓のあるデザイン。ペン先、キャップ、クリップ、首軸など一つ一つのパーツが細部までデザインされており、そういったパーツが組み合わさった最終系としてバランスがツボにハマりました。
また、心地よい弾力に富んだ書き味も素晴らしく、筆記を楽しませてくれる万年筆です。
レトロ感のあるデザインと遊び心のある書き味 | ペリカン M101N
ペリカンの万年筆はM200、M300、M400、M600、M800、M1000と一通り保有していますが、書き味として一番しっくりきて実用で手に取りたくなるのが、このN101Nです。
もちろん、M600やM800などのスーベレーンシリーズも素晴らしいのですが、スーベレーンシリーズよりもふわっとした書き味がなんとも心地よいと感じるのは私だけではないはず。
コロッとした表情にレトロ感のある佇まいが妙な愛着感を醸し出しつつ、それでいて遊び心のあるペン先に心奪われた万年筆です。
人生の記念軸として | マイスターシュテュック グレートマスターズ James Purdey & Sons
個人的な人生の記念軸としてお迎えしたもの。そういった観点で一生物です。
お値段がとにかく可愛くありませんので、人に簡単にはお勧めできるものではありませんが、モンブランとガンブランドがコラボして作られた木軸の万年筆です。
ボディにはコーカサス山脈のウォールナットが採用。チーク、マホガニーと共に世界三大銘木のひとつに数えられるウォールナットは、紫色を帯びた深い暗褐色の美しい木目は世界的に評価が高く、高級材の代名詞となっています。その美しさや品質の良さから、古くから家具やライフルの銃床など様々な用途で用いられてきた木です。
また、Purdeyのチェッカリングのエングレーブとメタルの象嵌をあしらい、ルテニウム仕上げの18Kペン先、さらに天冠のホワイトスターには、真珠の母の名を持つマザーオブパールが採用されています。
ペン先のサイズは実用として扱いやすい146サイズ。私は木軸ボディのエイジングも楽しみたく普段使いとして使用していますが、146サイズのペン先と重量のあるボディとのバランスが素晴らしく飾り物としての万年筆ではなく、実用万年筆としても素晴らしい性能を発揮してくれます。
万年筆であるよくある質問
万年筆を選ぶ上でよく聞く質問についても解説します。
国産の万年筆は漢字や日本語が書きやすい
国産の万年筆は漢字や日本語を書きやすく設計されており、初心者でも扱いやすいと記載しているブログ記事を多く見かけますが、別にそんなことはありません。
国産だって外国産だって書きやすいものは書きやすいし、書きづらいものは書きづらいです。
ただ、同じ細字でも国産万年筆の方が細目に作られているのは事実で、各数の多い文字を小さめに筆記したいのであれば、同じ細字なら国産万年筆を選ぶ方が良いというのは事実です。
また、万年筆は調整師にお願いすることでインクフローを調整することが可能です。
もし、イメージよりも太い筆記線になってしまうようであれば、調整に出すことでどうにでもなります。
金ペン万年筆は使えば使うほど自身に馴染んで書きやすくなる
「金ペンは柔らかく、使えば使うほどにペン先が削れて自身の筆記に馴染み書きやすくなっていく」こんなお話をよく耳にしますが、これも間違いです。
金ペンであっても鉄ペンであっても、ペン先にはイリジウム合金が溶接されており、紙面とあたるペンポイントはイリジウムであって金でも鉄でもありません。その為、金のペン先が削れて書きやすくなるというのは間違いです。
もちろんイリジウム合金が削れるということも無いとは言えませんが、めちゃくちゃ硬い素材ですので数年間毎日使ったとしても、たいして削れることはありません。
また、使い続けることによって、書きやすくなるケースもあれば書きづらくなるケースもあります。
どちらかと言えば書きづらくなるケースの方が多いです。
万年筆のペン先は刃物と同じようなもので、定期的なメンテナンスが必要。メンテナンスをしたタイミングが一番書きやすく、徐々に違和感が出てくる。
違和感が出たらまたメンテナンスを施す。
そんな風に考えておいた方が間違いはないはずです。
万年筆 一本主義の方へ
「筆記シーンなどによっておすすめされる万年筆が違うのは分かった。でも私は一本主義でいたいんだ。一本だけお勧めするならどれをお勧めするんだ?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
もし私が何らかの都合で、「一本だけ残して残りの万年筆は全て手放さなければならない」となってしまったらどの万年筆を選ぶか。
最後に紹介したJames Purdey & Sonsは特殊すぎるのでここでは外して、オーソドックスな10万円以下の万年筆で考えると、カスタム845を選ぶと思います。
エボナイト+漆塗り仕上げのボディ性能、パイロット15号ペン先の書き味に絶対的な信頼があるためです。
ただ、字幅に関しては上で紹介したカスタム845のF(細字)ではなく、カスタム845のM(中字)を選びます。一本に絞るのであれば、マルチなシーンでの筆記が前提になりますので、どんなシーンでも扱える中字がベストです。
とは言いつつ、一本に絞らなければならないなんてことは生涯無いことを祈ります。笑
万年筆の選び方
最後に万年筆の選び方について解説します。
万年筆を選ぶ際に気を付けるべきポイントは以下の7つです。
- 使う用途と字幅
- ペン先の素材(金・鉄)
- ペン先の性質(軟・硬)
- 軸のサイズと軸の重心
- 軸の素材
- デザイン
- 価格
万年筆を使う用途と字幅
万年筆を選ぶ上で1番大切なのはどんなシーンで使いたいかという事。
仕事や勉強でメモやノートを取る、手帳に細かな文字を書き込む、日記を書く、手紙を書く、宛名書きをするなど筆記するシーンは様々です。手帳なら細字、宛名書きなら太字と用途によって字幅を変えるのが一般的です。
万年筆の字幅は以下のように設定されています。
- EF:(エクストラファイン・極細字)
- F:(ファイン・細字)
- FM:(ファインミディアム・中細字)
- M:(ミディアム・中字)
- B:(ブロード・太字)
- BB:(ブロードブロード・極太字)
手帳など細かな文字を書く必要がある場合は細かな文字の書ける細字や極細字をお勧めします。メモ書きなど速記が必要な場合や、宛名書きなどでは中字〜太字をお勧めします。
中字や太字は、細字と比べると滑らかで気持ち良い筆記ができるとともに、インクの濃淡を味わう事が出来ます。
ペン先の素材(金・鉄)
ペン先の素材・性質というのは、万年筆のペン先には14金や18金・21金などの金で出来ているもの(金ペン)と鉄やスチールで出来ているもの(鉄ペン)があります。
一般的には金ペンの方が柔らかく鉄ペンが硬い書き味となることが多いです。
ペン先の性質(軟・硬)
また、筆記時にしなりの強い柔らかなペン先から硬めでガチガチなペン先などがあります。
良くしなるペン先は軟調ニブと呼ばれ、筆圧によって味のある文字が書けるのが特徴ですが、筆圧の強い方が軟調ペン先の万年筆を使用すると、ペン先が柔らかすぎて最初は驚かれるでしょう。
軸のサイズ・重心
ペン先と同じくらい重要なのが軸のサイズ。細い軸、太い軸、短い軸、長い軸などありますので自分に合った軸を選ぶ必要があります。
一般的には太くて長めの軸の方が、長時間筆記に向いていると言われています。
私自身にもこの話は当てはまっているようで、腰を据えて筆記したいときには大きめの万年筆を持つケースが多いです。
また、軸の重心も選ぶ際のポイントになります。
もちろん使い手によって感覚は異なりますが、万年筆はボールペンと比べると寝かして書く筆記具ですので、自然とペンが寝かせられる高重心のものが使いやすいです。※キャップを軸の後ろに付けてさらに重心を高い位置にもっていくケースもあります。
軸の素材
万年筆の軸の素材は、主に次の5つに分類されます。
- エボナイト製(その上に漆塗りしたもの)
- 樹脂系(レジン・プラスチック)
- セルロイド
- 木
- 金属
エボナイト製や、その上に漆塗りされたものは、素材自体が吸い付くような感覚があり、汗をかきやすい環境でも滑らずにしっかりとグリップできますが、その分、値段が高くなってしまいます。
現在一番主流になっているものは樹脂系の素材で作られたもの。樹脂系の素材は軽く加工が容易で、年数経過による変化が少ないことが特長です。
また、書きやすい・書きづらいという判断ポイントだけでなく、愛着を持てるかどうかも大切です。
私は経年変化を楽しめる木で作られた万年筆が好きです。ただし、インクが付いてしまったらシミになりますし、扱いは繊細な配慮が必要となります。
価格
万年筆は価格の幅が非常に大きく、安いものでは1,000円という安価なものから高級なものでは10万円を超えるものまで。(中には100万を超える万年筆もありますから驚きます)
最初はどの価格帯の万年筆を選べば良いのか悩まれると思いますが、とりあえず万年筆がどんなものか試してみたいのであれば、パイロットから発売されているカクノがお勧めです。
スチールペン先ですが、1,000円で購入できますし万年筆ならではの書き味や機能を一通り体感できるでしょう。
本格的な金ペンになると、最低でも10,000円以上となります。
3万円〜5万円クラスになると軸に使われている素材にこだわっているものが多く、選ぶ楽しみも増えます。また各ブランドの上位モデルは7万〜10万程度のものが多いですが、最初から上位モデルを選んでもその良し悪しがわからないはずです。
とりあえず本格的な万年筆を使ってみたいのであれば、本記事の最初に紹介したパイロットから発売されている「カスタムヘリテイジ92」という万年筆をお勧めします。
ペン全体のバランスが良いこと、14金の本格的なペン先で適度な硬さとコシのある書き味で、手帳やノートなどで細かく筆記する際など実用で重宝しています。
ボディ全体がインクタンクになっており大量のインクを入れられるとともに、透明軸なので常にインク残量が確認できます。
普段使いとして安心して使えるとともに、入れたインクの色が見えるのは気分が上がります。
また、パイロットの万年筆は品質に高い定評があり、個体差によるハズレが本当に少ないこともお勧めする理由です。
こだわりの一本を見つけよう!
万年筆の書き味やシーンに応じて、私が使用しているものからおすすめの万年筆を紹介してきました。
この記事を読んでくださった方が、最高の万年筆に出合う手助けとなれたら嬉しい限りです。
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