ブラックボディにゴールドトリムの万年筆は、黒×金で仏壇カラー・仏壇万年筆・仏壇軸などと呼ばれます。仏壇軸は重厚で格式高い印象を受ける反面、個性を出しにくい色使いであるがゆえにボディー全体のデザイン・ディティールによっては、「おじさんくさい万年筆」と残念な感じ取られてしまうことも。
私自身、現在保有している万年筆の中で圧倒的に保有本数が多いのが仏壇軸なのですが、万年筆に興味を持ち出した頃は、店頭で並んでいる国産の試筆用仏壇万年筆を眺めては悩ましく感じていた時期がありました。店員さんに初めて万年筆買うならコレとお勧めされるものの、かっこ悪くて持ち歩くのは嫌だなって思ったのは僕だけではないはずです。
今回レビューする万年筆は「アウロラ88オタントット800」。この万年筆もブラックボディにゴールドトリムの仏壇万年筆ですが、イタリアブランドが作ると美しく見えてしまうのが本当に不思議です。
紹介させていただきます。
アウロラ88オタントット800レビュー
アウロラ88は建築家マルチェロ・ニッツォーリのデザインによるもので、1952年には100万本以上の販売実績を達成したベストセラーの復刻版です。単に復刻するだけでなく内部機構に最新式のリザーブタンク付のピストン吸入式を採用するなど、クラシックな風合いを生かしつつ新しい技術を集約させたアウロラの代表作です。
さて、アウロラの万年筆といえばアウロラ特製のアウロロイド樹脂を使用したオプティマなどの美しい軸がまず思い浮かびます。私自身も以前88 MARTE(マルス)に一目惚れをして、いつかはマルスをと考えていた時期もありました。
いつかはと書いたのはマルスを断念した為で、その理由は自分をわきまえているから。
妻と一緒に文具屋に行きマルスの値段が妻にバレてしまったんですよね。妻もマルスに一目惚れして、いつか万年筆買うならこれが綺麗で良いね。値段いくら?え、10万円?そんな流れ。
妻に相談する事なく堂々とマルスレベルをお迎えする力は私にはありませんので基本は内緒で購入するわけですが、万が一見つかった際に「あれ?この赤い万年筆って高いやつだよね?どうしたの?」と聞かれたら嫌じゃないですか。嫌ですよね?
そういった事もありイタリア製ならではの美しい煌びやかなマーブルのアウロラ軸は諦めましたが、アウロラの書き味はずっと気になっており、いつかはアウロラの万年筆を手に入れたいなと思っていたのですが、今回ブラックボディにゴールドトリムという仏壇軸のアウロラにてお迎えすることができました。
カスタム74とアウロラ88オタントット800。これなら机上に転がっていてもバレることはありません。(いい加減にしろ)
デザイン
それではデザインから見ていきましょう。キャップをつけた状態でカスタム74と比べてみた時は小太りでコロンとした表情に感じましたが、キャップを取り外すとインク窓を起点に美しい曲線が描かれていました。
ペン先から首軸にかけて太くなっていく形状は、その形状自体がペンをグリップした際の安定感を担保してくれます。
また、インク窓によってインク残量が一目でわかる仕様はきちんと実用性を最重視してデザインされていることが伝わってきました。使用頻度が高い万年筆はインク窓に助けられる事も多々。ありがたいですね。
14金のバランスの良いサイズ感のペン先。刻印がおしゃれです。
ペン芯は古典的なエボナイト芯が採用されています。
コストの関係からプラスチック性のペン芯が採用されることが多い中でエボナイトペン芯が採用されているのもこだわりを感じますね。
※プラスチック性のペン芯は表面がインクをはじいてしまうことがあるため、インクとの相性をよくするために表面処理がなされています。素材自体がインクと相性が良いエボナイトは、ペン芯の素材としては極めて優れているのです。
サイズ感
続いてサイズ感を見ていきましょう。左からモンブラン146、パイロットカスタム74、そしてアウロラ88となりますが、キャップを締めている時のサイズ感は非常にコンパクトです。
キャップを取り外すと、コンパクトではなくなり、モンブラン146と同じくらいのサイズ感となります。軸の太さも146と同じくらいですが、アウロラ88は首軸にかけて細くなっているので持った感触は少し異なります。
キャップを後ろにつけると3本ともほぼ同じサイズ感になりました。
重心などは微妙に異なってきますので、グリップした時の好みは分かれるかと思います。
書き味
インクは伊東屋カクテルインク No52 Motomachi Evening Sky、用紙は先日のとのりむイベントで購入したくらたまさんの原稿用紙。
書き味としてはサリサリというかシャリシャリというか、そういった表現を以前から聞いていたことがありましたが、確かにサリサリとした書き味で悪くはありません。
購入したペン先はMサイズですが、インクフローも申し分なく、高速筆記にも十分に耐えられますので実用にも申し分ありません。
友達からアウロラは使用頻度の高い万年筆になると聞いてましたが、私の中でも使う頻度は高くなりそうです。
これから主力万年筆としてしっかりと活躍してもらいたいと思います。