Waterman(ウォーターマン)を代表する万年筆カレン。
美しい流線型のボディに一見万年筆っぽくない形状をしたペン先など、お洒落で個性の強い万年筆ランキングを作ったら上位に食い込んでくると思われる一本です。
また、デザインだけでなく実用性も高く、私自身も仕事用の一本として愛用してる万年筆です。
自分自身で使用するのはもちろんですが、大切な方へのプレゼントとして高級万年筆としても最適な一本だと感じていますので、この辺りを踏まえてレビューしたいと思います。
ウォーターマンカレンレビュー
ウォーターマンの歴史
まずウォーターマンについて、ぜひおさえておくべきエピソードを簡単に紹介します。
ウォーターマン社の社名は、ルイス・エドソン・ウォーターマンという創業者から付けられたもの。ウォーターマン氏は元々筆記具を作っていたのではなく、ニューヨークで保険外交員として働いていた方です。
ある日、保険外交員として顧客との大口契約を取り交わす席でアクシデントが起こります。ウォーターマン氏は契約のために万全を期して新品のペンを用意していましたが、いざ契約当日にそのペンからインクが漏れ、重要な契約書を汚してしまうのです。当時主流となっていたインク貯蔵式の鋼鉄ペンは「インク漏れしやすい」という致命的な弱点をもっていたのですね。
大急ぎで新しい契約書を作り直し後日再訪問したところ、その顧客は既にライバル会社と契約を結んだ後。インク漏れして契約書をダメにしてしまったことから大口顧客を取り逃してしまいました。
大きな契約を他社にとられてしまった悔しさから、ウォーターマン氏は万年筆の開発にのめりこんでいき、1883年に世界初の毛細管現象を応用した万年筆「ザ・レギュラー」を完成させましたというエピソードです。
ウォーターマン社は、世界で初めて毛細管現象を応用した万年筆を発明、インク漏れを解消するためのくぼみを設けたペン芯「スプーン・フィールド」供給システム、他にもクリップ付きのキャップやカートリッジなどを発明するなど万年筆の基礎を築き上げ、「万年筆の祖」と称されているとともに世界に君臨するペンブランドに成長したのです。
こういったエピソードから、「ウォーターマンの筆記具はビジネスで成功させるための筆記具」、「お客様に気持ちよく契約してもらうことを考えて作られた筆記具」そんな花言葉のような言い伝えが存在します。プレゼントする相手にわざわざストーリーを話す必要はありませんが、どこかのタイミングでストーリーを知ることがあれば良い印象をもたれること間違い無いでしょう。
道具としての魅力
さて、ウォーターマンの魅力は歴史やエピソードだけではありません。今回紹介するCARENE(カレン)は、デザインも素晴らしいですし書く道具として素晴らしいスペックを持った万年筆です。
デザインからみていきましょう。
デザイン
漕ぎ進む船の舳先をイメージして生まれたと言われる「カレン」。先進的なフォルムは先駆者としての精神を最も表現したデザインだと言えるでしょう。流れるように繊細なカーブを描きだすシルエットは、クルーザーの滑らかなラインや、波を分けて進むヨットのはためく帆を想像させます。
その中でも目を見張るのはカレンのペン先。
一般的な万年筆とは異なる三日月のような型をした象嵌式のペン先形状。なだらかな曲線を組み合わせたような首軸との繋がり具合は実に素晴らしく、スタイリッシュな印象を受けます。
またキャップは嵌合式でキャップをパチンと嵌める方式が採用されていますので、ねじ式と比べてサッと使いはじめられますし、お客様とのミーティングなどで取り出しても、問題なく溶け込むことができます。
また、キャップを後ろに付けてもスタイリッシュさを損わないのがカレンの魅力の一つです。
カレンにおいてはキャップを後ろにつけた時のデザインとしてのバランス的が素晴らしいのです。
キャップを後ろにつけていない状態
キャップを後ろにつけた状態
付けていた方が素敵に見えます。
またキャップを後ろにつけていない時の重心と、つけた時の重心は下の写真の位置。
キャップをつけていない状態では若干前重心であったのが、キャップをつけることで少し後ろ重心になる程度。カレンの場合はキャップをつけたとしても極端な後ろ重心になるわけでもありませんので、角度が寝過ぎてしまうという問題もありません。
ペン先の話に戻りますが、カレンには18金のペン先がついています。
18Kとウォーターマンのマーク、その右側には750の刻印があります。ちなみに字幅に関してはペン先に表記されておらず、後ろ側に記載されています。
M(中字)の刻印が見えると思います。
また、ペン先と合わせて特徴的なのが尻軸。
こちらがカレンの尻軸。
エロく無いですか?(語彙)
尻軸もクルーザーを意識しており、横から見るとそのクルーザーさが伝わってくるデザインになっています。
カレンの書き味
さて、カレンの書き味も極めて独特。ペン先のしなりはほとんど無くとにかく硬いです。
ガチニブと言えばカレンと言われるほど硬くてしっかりとしたペン先となっており、意識的に筆圧をかけてあげれば少しだけしなって切り割りが開く程度です。(強引に筆圧かけても1〜2mm程度の開き)
現代は柔らかいペン先よりも硬めのペン先の方が主流となっており、柔らかいペン先を特殊ニブにカテゴライズされていますが、そういった現代においてもカレンのガチニブさは際立っており、カレンの書き味を「鉄の棒で書いているよう」と表現する方もいるくらいです。
カレンの筆跡
筆圧の加減によって多少の強弱は付けられます。
なお、個人的にこの硬さは好きな部類。フレックスニブのような楽しさはありませんが、ペン先は硬いもののペンポイントの研ぎ状態は素晴らしく滑るように筆記が出来ますし、普段の筆記時に意識して筆圧をかけることはありませんので、無駄に柔らかく無い方が筆記に集中できます。
また、冒頭にて話したプレゼントにも最適な万年筆というのもこの硬いペン先からくるもの。万年筆に精通したユーザーであれば筆圧をコントロールしながら筆記しますが、万年筆を初めて持つようなユーザーだと強すぎる筆圧をかけてしまいペン先をダメにしてしまうケースもありますから、強い筆圧をかけても壊れないカレンのようなガチニブから万年筆デビューしてもらう方が良いのです。
「ペン先が硬いから万年筆の特徴を活かした味のある筆跡が残せない」なんてことは一切なく、万年筆ならではの美しい筆跡はもちろん残せます。
こちらはカレンと、同じくウォーターマン社のブルーブラックインクで筆記したもの。
ウォーターマンのブルーブラックは美しい濃淡が表現できる明るい色合い。またウォーターマンのM(中字)は海外ブランドでありがちな太すぎな訳でもなく、また細すぎもせず丁度良い字幅。インクと合わせて万年筆ならでは濃淡のある味のある筆跡を残せる組み合わせです。
まとめ
改めてウォーターマンカレンについて纏めますと、
- ウォーターマン社が筆記具を開発する上でのエピソード
- ビジネスでもさりげなく使えるとともにお洒落感の高いデザイン
- 18金ペン先とバランスの良いボディ
- 万年筆に不慣れな方にでも使いこなせるがっしりとしたペン先
- 実用的な書き味
と、自分自身が使う万年筆としてはもちろん、プレゼントとしての最適なスペックだと感じませんか。
また、私が保有しているブラック・シーで定価は40,000円(税込み44,000円)と高級万年筆の部類に入りますが、他ブランドの万年筆と比較して割引率が高いのも大きなポイント。
大切な方へのプレゼントに筆記具を考えられている方、ぜひ候補の一つに入れてみてください。
自信を持っておすすめできる1本です。
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