パイロット社から発売されている大型30号ペン先のついたカスタムウルシ。
私が保有しているどの万年筆と比較しても滑らかさで右に出る万年筆はありません。特に紙面とペンポイントの角度が合った時は一切の引っ掛かりやざらつきがなく、紙面を滑るようななめらかな書き心地を体験でき本当に癖になります。
購入当初は柔らかすぎるペン先の筆記感に馴染めなくて使いこなすのに苦戦しました。またFやEFなどの細字がメインの私にとってはBという太字にも中々慣れず購入したことを後悔した日も有ったレベルです。
周囲やメディアが最高の万年筆だと絶賛されている中で自分だけが良さを引き出せないということに悩みましたが、使い方に慣れてきた最近では「カスタムウルシは筆記を楽しむための最高の万年筆」というポジションになりました。
ウルシ購入時の苦戦のおかげで習字を始める事ができたので今思うとそんな苦労も良い思い出です。
現在保有しているカスタムウルシはB(太字)の為、普段使いには太いですが抑揚のある文字やインクの濃淡を楽しむには最高の字幅です。
ペン先だけではない漆軸の素晴らしさ
さて、滑らかな書き心地とペン先の柔らかいしなりから抑揚のある文字が筆記できる事がカスタムウルシが人気のある理由ですが、実はカスタムウルシの魅力はペン先による書き味だけではありません。
カスタムウルシのボディはその名が示す通り、ボディに漆塗りが施されている「漆塗万年筆」であることが大きな特徴となっています。
エボナイト樹脂ボディの上に高品質な漆塗が施されているのですが、手に取った時にしっとりと馴染む感触がたまらなく、ただ支えているだけなのにしっかりとグリップされてるような安心感に包まれます。
万年筆だけに限りませんが、書き物をしているとその筆記具がその時々の自分のコンディションによって書きやすかったり、書きづらくなったりするケースあります。気楽に書き物をしているときはさほど気にならなくても、緊張しているときや気温・湿気によっては、手が汗ばんだり油っぽくなってしまい軸をグリップし辛くなるケースです。
万年筆での筆記は本来軸を支える程度の力でグリップすれば良いのですが、このような手の状態になると無駄に力を入れてグリップしてしまい良いことはありません。
先日も習字をしていた時に暑さでそのような状況に陥ってしまい、手を石鹸で洗ったりして誤魔化しつつ練習していたのですが、自室にはエアコンが無いので暑い時期はかなり辛い状況に強いられます。
そういった時にカスタムウルシを手に取ると漆軸の素晴らしさが改めて体感できるのですが、他の軸では滑りやすくなっている状態でもカスタムウルシは手にくっつくような感覚があり無駄な力を入れることなく筆記に専念する事ができます。
これは他の万年筆の軸に使われている素材が良いとか悪いとかではなく、とにかく漆軸をグリップした時の感触が別格なのです。
普段良いコンデションで万年筆を使用している時はどんな軸を使っても違和感なく筆記できますが、少し過酷な状態になった時にこういった素材の違いが総合的な書きやすさに繋がります。
他の漆軸が欲しくなる
さて、漆軸の素晴らしさを体感すると、普段使いができる漆軸が欲しくなります。カスタムウルシを日常で使えれば良いですが(使いたいですが)、流石にこの大きなボディに柔らかいペン先を普段使いにするのは難しいものがあります。ついでに太字ですし。
漆軸は高級ですので普段からガシガシ使うとまではいきませんが、もう少し広い範囲で使える漆軸の万年筆が欲しくなるというのが正直な心理。
となるとターゲットとしては同じパイロット社のカスタム845あたりでしょうか。ペン先はF・M・B・BBと種類がありFなら習字の清書にも使えます。特に習字の清書時は信じられないほど緊張して手のコンディションが悪くなりますので、そういった時に漆軸のぴとっと吸い付く感じの素材感がかなり助けられるはずです。
中屋万年筆という選択肢もありますが中屋万年筆を買うなら是非とも中軟を手に入れたいです。中軟だと普段使いというよりも筆記を楽しむ方向に行ってしまいそうなので、やっぱり次はカスタム845のFでしょうかね。
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