手帳に書き込む、思考を書き出す、メモを取る、純粋に筆記という行為を楽しむ、習字する、その時々の用途や気分に応じて万年筆を変える。
手帳に書き込むのであれば細字で固めの書き味のものが扱いやすいし、思考を書き出すのであれば太字で紙面へのあたりが柔らかく滑るような筆記感を楽しめるものをチョイス。純粋に筆記を楽しむ場合は気分に応じて万年筆を選んだり。これ使ったりあれ使ったりというのは複数の万年筆を保有しているからこその楽しみなのかもしれません。
インクもしかりで万年筆との相性合わせだけでなく、書く内容によって色を変えたりと楽しんでいます。
勝負万年筆はカスタム845
さて、浮気性なのかと勘違いされるレベルで複数の万年筆やインクを楽しんでますが、習字においては絶対にブレることのない本命万年筆と本命のインクが存在します。
それが画像の組み合わせ。万年筆がパイロット社のカスタム845F、インクがプラチナのブラック(普通のブラック)です。この組み合わせはペン習字の清書で使っているのですが、普段どれだけ浮気しても本番はコレと決めています。
インクのプラチナブラックについては別途お話しするとして、今回はパイロット社のカスタム845についてお話したいと思います。
カスタム845が本命になった理由
カスタム845Fとプラチナブラックが自分の中での本命である理由についてお話しますと、たどり着くところペン習字のお手本のような文字が書きたいというところに行き着きます。
お手本のような美しい文字を書くには練習を重ねていくしかないですし全くたどり着いてないですが、同時にお手本と同じ書きっぷりで書ける字幅ってどの万年筆(ペン先)になるのだろうとか、清書用紙に滲まずに綺麗に書けるインクってどれだろう、そんなことも考えるようになりました。
パイロットペン習字では細字を推奨してますので(お手本の文字が細字だから合ってるはず)、基本は細字の万年筆で筆記するわけですが、細字といっても各メーカー様々です。また同じメーカーの万年筆でもシリーズによって書き味が異なります。ペン先の柔らかさ・紙面への当たり・止め跳ね払いで表現される筆記線など繊細な感覚と成果物が少しずつ異なってくるわけです。
例えば線の強弱が出れば味のある文字が書きやすくなりますが、それを成果物として良しとするかそうでないかはその時次第ですから正解がどれというものはありません。ただ、自分が求める正解はお手本に近い筆記線が書ける万年筆というものです。
手元にあった細字の万年筆で筆記。同じ細字万年筆でも表現される成果物は若干異なってきます。
ペン先はパイロットのFが理想に近い
これまで練習・清書を含めいくつかの万年筆で書いてきましたが、保有している万年筆の統計を見るとパイロット社の万年筆で字幅はF(多少の個体差はあります)が自分のイメージする筆記線が書けるように感じます。
次に同じパイロットの中でもいくつかのFがありまして、ペン先の大きさや素材(14金・18金など)によっても少しずつ紙面へのあたりが変わってきます。
パイロットの万年筆のF。左から、カスタム845(15号 18K)、ワーグナー912ベース(10号 14K)、カスタム92(5号 14K)、グランセ(3号 14K)、コクーン(鉄ペン)。ペン先の素材と大きさが異なると書き味も少しずつ変わってきます。
どれが好きとか嫌いとかはなく、それぞれの書き味を気に入っていますが、習字においては繊細な柔らかさをもつ15号18金のカスタム845が自分がイメージする書き味に近いと感じます。※カスタム845のペン先は軟調ニブのような柔らかさではありません。人によっては硬いと感じる方もいると思いますが、ペン習字は力を抜いて書くことを求められますので、845レベルの柔らかさがちょうど良いです。
緊張すると汗で手が滑る
続いてペン習字を始めるまでは気づかなかったことがいくつかありました。それは緊張すると極度に汗をかいてしまうということ。
ペン習字において大きなイベントが毎月の課題提出となり、パイロットペン習字では「級位認定課題」と「添削課題」の2つの課題があります。特に級位認定課題においては1ヶ月の練習の成果を清書し、それを級位として評価されるものですから真剣です。緊張するという事は手に汗もかきますし、その汗で軸を滑らせないようにと無駄な力が入ってしまいます。
そんな状態であるとともに緊張で手の震えも生じる訳で、「汗で滑って力が入りさらに手の震えと戦う」といういわば最悪の状態で清書をしなければなりません。私の場合、この状態が顕著に出てしまい、普通の樹脂軸では文字がまともに書けませんでした。
特に練習を頑張った月は余計にプレッシャーがかかるようでダメでした。
エボナイト軸が良い
ペン習字を始めるまでは、緊張で汗かいて手が震えて文字が書けないといった経験もなかったので普通の樹脂軸でも大丈夫だったのですが、毎月のようにこういった問題が続いたので、何か解決策はないかと調べた結果、エボナイト軸にたどり着きました。
調整師との会話の中で、「ペン先の書き味はなんとかしてあげるから、気に入った軸を買ってきなさい」と言われたことがあります。万年筆というとどうしてもペン先の書き味に興味が行ってしまいがちですが、ペン先と同じくらい軸の相性も重要です。軸の素材、太さ、重さ、重心などです。
メモで万年筆を使う程度ならなんでも構いませんが、長時間の筆記をしたり私のように緊張したりする人には特に重要です。
カスタム845は、削り出したエボナイトと漆で仕上げたパイロットを代表する万年筆。エボナイトだけでも滑りづらいですが、そこに漆が加わると、しっとりと手に吸い付くような独自の触り心地で緊張して汗をかいても滑ることがありません。おかげで845で清書を行うようになってからは汗で滑ってしまうことによるトラブルはなくなりました。
エボナイト軸というだけで値段が高いのが痛いですが、私が万年筆を選ぶ上でのベースでこればかりは崩せそうにありません。
カスタム845の書き味とエボナイト+漆軸の質感は絶対的な安心感を与えてくれる最高の一本です。
上手に書けるかどうか、あとは腕次第ですね。
4 件のコメント
万年筆沼から抜け出るケジメとしてカスタム845を買いました。 パイロットの最高峰なのでこれ以上に良い物がないのだから、これがラストバイになるだろうと期待ました。 木箱入りのパッケージやら何やら期待した通りの逸品でしたが、購入時に気張っていたのか、Mニブを頼んでしまいました。
その結果、私の技量では、美しい漢字を書く事が出来ず、ハネや払いなど微妙な所が皆ツブレてしまいます。 それで、ニブを少し細く、Fニブ程度に調整して貰おうと思うに至りました。
ヨシゾウさんも書かれている様に、習字にはFニブが最適だと思うので、直してもらえば少しはまともな字に近づける様に思うのですが、如何でしょう?
メーカーが吟味して作ったMニブを尊重するべきでは?とも思うのですが、どちらが良いかご意見をお聞かせ下さい。
宍戸さん、はじめまして。845のお迎えおめでとうございます^^
845系(18K 15号)のペン先はMとF両方を使ったことがありどちらも大好きですが、美しい漢字を書くという観点ですとFに寄りますね。
ただMのぬらぬら感を捨ててしまうのも勿体無く、個人的な意見でしたら綺麗な文字を書くためのEFやPOを別で準備する方が幸せな気がします。
合わせてMの書き味がピンと来てないようであれば、調整師に見てもらうがベストかと思います。18K 15号 Mの自分に合った最高の状態は本当に最強です^^
「万年筆沼から抜け出るケジメ」と冒頭にお言葉頂いたのに、別のペン先を提案してしまい恐縮ですがお互い沼人ということで。笑