「モンブランから木軸が発売された。」
そんな話を聞いたのは2018年の11月のこと。海外に仕事(お買い物?)に行ったお友達から、グループに写メが届き皆で興奮したのを覚えています。
よくある木軸の万年筆ではなく細部までこだわった作りであることが、現地にいるお友達の言葉、そして写真からもしっかりと伝わってきてこれは凄いという話になりました。
とは言いつつモンブランがこだわり抜いた木軸の万年筆です。普通に買えるお値段であるわけがありません。予想通りというか予想以上に可愛げのないお値段を聞いて我に帰るとともに、いつかは手にしたい万年筆の筆頭となったのでした。
その後、日本のモンブランブティックや高級筆記具店にもJames Purdey & Sonsが並び始め、写メで見たものと、実物との差に改めて驚かされました。写メでも凄いなと思っていましたが、実物の質感は全く違うものでした。ボディ全体の質感から始まり職人によって木軸に刻印された装飾模様、そしてルテニウムコートを施したペン先など私のツボにドストライクでした。
実は私、2019年12月末で12年間務めてきた会社を退職し2020年1月より新しい会社に転職しました。そんな人生の節目を兼ね James Purdey & Sons をお迎えしたのでした。
ご紹介致します。
目次
マイスターシュテュック グレートマスターズ James Purdey & Sons レビュー
1814年にロンドンで創業し、狩猟用の優れた銃やライフルを製造するブランドとして地位を確立してきたPurdey社と、Montblanc社とのコラボレーションによって誕生した万年筆、それが、「モンブラン マイスターシュテュック グレートマスターズ James Purdey & Sons(ジェームズ・パーディ&サンズ)」です。
ボディにはコーカサス山脈のウォールナットを使用、Purdeyのチェッカリングのエングレーブとメタルの象嵌をあしらい、ルテニウム仕上げの18Kペン先、さらに天冠のホワイトスターには、真珠の母の名を持つマザーオブパールが採用されています。
モンブランのリミテッドエディションには、作家シリーズやパトロンシリーズ、グレートキャラクターズなど複数のシリーズがありますが、今回紹介する「James Purdey & Sons」は、グレートマスターズコレクションと呼ばれ、このコレクションについて公式ウェブサイトの言葉を借りると以下になります。
なお、同じグレートマスターズコレクションでは「エキゾチックレザー ブラックアリゲーター」というワニの革をベースに職人が手作業で繊細なステッチが入れられたものも存在します。
話を戻してJames Purdey & Sons。この万年筆の素晴らしさは是非手に取って全身で感じるのが一番だと思いますが、少しでも共有したく写真多めに紹介していきます。
仕様・デザイン
まずボディ全体のディテールと素材について。
ボディに使われているウォールナット材は、コーカサス山脈で採れたもの。コーカサス山脈は、黒海からカスピ海まで東西に走る山脈で5000m級の山が連なる山脈です。
この辺り。
ウォールナット材はクルミ科の銘木で、チーク、マホガニーと共に世界三大銘木のひとつに数えられます。紫色を帯びた深い暗褐色の美しい木目は世界的に評価が高く、高級材の代名詞となっています。
特徴としては、高密度で高重量・硬くて耐久性に優れているとともに、衝撃にも非常に強い。また、木は梅雨などの湿度の高い時期に膨張し、空気が乾燥する冬に収縮するといった変形のしやすさを懸念しますが、ウォールナットは、乾燥処理後はほとんど狂いが生じないことも特徴です。
素材の美しさや品質の高さから、古くから家具やライフル銃の銃床(銃身を支える部分)などにも採用されており、Purdey社のライフル銃でも使われています。そのウォールナット材を万年筆の軸材に採用して完成されたのが、マイスターシュテュック グレートマスターズ James Purdey & Sonsなのです。
ボディ全体にはPurdeyのチェッカリングが刻まれています。チェッカリングというのはライフルやナイフのグリップに彫り込まれる網目状の溝の事で、この網目状の溝が滑り止め効果となります。
ウォールナットはツルツルと滑りやすい素材ですが、この万年筆においても刻まれたチェッカリングによって滑るという感覚はほとんどありません。
さらにはウォールナットに嵌め込まれた象嵌。象嵌は工芸技法のひとつで、象は「かたどる」、嵌は「はめる」と言う意味。一つの素材に異質の素材を嵌め込む技法を指し職人が手間暇掛けて繊細に作り上げていくものです。
続いて天冠のホワイトスター。天冠のホワイトスターには真珠の母の名を持つマザーオブパールが採用されており、一般的なホワイトスタートとは全く異なる素材感と美しさがあります。
キャップを取り外すと、ブラックロジウムで仕上げられたペン先と首軸が現れます。この首軸から先のブラックゴールドな佇まいがボディのウォールナットと絶妙なバランスで融合し、Purdeyとしての雰囲気をより高めているように感じました。
クローズアップして、James Purdey & Sonsのペン先。
ペン先の模様が何を意図するものは分かりませんが、モンブランの象徴である4810、Mといった刻印とパーディ社のものだと思われる模様が描かれています。
さて、James Purdey & Sonsの全体的なサイズ感としては146のサイズとなります。写真は90周年モデル、ウルトラブラック、そしてJames Purdey & Sonsのの3本。James Purdey & Sonsが一般的な146サイズと比較して一回り太いし重量もあります。また存在感も圧倒的に強いので大きく見えます。
ちなみに90周年モデルとウルトラブラックの重量は30〜31g程度ですが、James Purdey & Sonsの重量は71gあり万年筆の中でも相当重たい部類に入ります。
現行の146(写真の90周年モデルとウルトラブラックを含め)のペン先は14Kですが、James Purdey & Sonsは18Kペン先となっているところも異なる点になります。14Kと18Kの差による書き味の違いは調整による部分の方が強いと感じます。
ペン先はMですが(モンブランの限定品はMが多いです)、私のペンの持ち方においては、モンブランのMは筆記角度によって書きづらい部分があり、ペン先調整が必須。ウルトラブラックもJames Purdey & Sonsもペン先調整を施しており、自分用として最高の書き味に仕上げてもらっています。
まとめ
今回、デザインや作りに対しての紹介がメインとなりましたが、この万年筆の一番の魅力は、けして飾り物ではなく実用品として使っていく事で、素晴らしい味が出てくるものであるという事です。
James Purdey & Sons社の使い込まれたライフルの画像などをネットでも眺めていますが、これから10年、20年とこの万年筆を使い込んでいった先にあるエイジングを想像すると楽しみで仕方ありません。
2019年から2020年にかけて、私の中では大きな節目を迎えたわけですが、これからの人生はとともに時間を歩んでいきたいと思います。