【万年筆レビュー】実用万年筆の最高峰パイロットカスタム845・カスタム一位の木・カスタム槐

カスタム845・一位の木・槐 万年筆レビュー

カスタムURUSHI(ウルシ)の発売以来、パイロットの高級万年筆といえばカスタムURUSHIという印象が植え付けられた感があります。

エボナイト軸を漆で仕上げた大型のボディに、30号という特大ペン先をつけたカスタムURUSHIは間違いなくパイロットの最高峰に位置する万年筆。モンブランであればマイスターシュテュック149、ペリカンであればスーべレーンM1000、セーラーであればキングプロフィットと各ブランドが自信を持って最高の書き味と謳う万年筆と対抗できる万年筆であり、書き味においては全く別世界を味わえるのがこの万年筆の特徴です。

カスタムウルシ
カスタムウルシ(B)

大型のボディでありながら軸を支えるのに全く力を要せず、ペン先を紙面にあてた感触を抽象的な言葉で例えると「無重力」という言葉がふさわしく、弾力性に富むペン先と当たりが柔らかく一切の筆記抵抗を感じさせない書き味はカスタムウルシでしか味わえません。


私はカスタムウルシに「色彩雫 霧雨」を飲ませて筆記を楽しんでいますが、濃淡が美しく表現できるので、文字を書く行為自体を楽しんでいます。

ただ、カスタムウルシは大型すぎる万年筆であるがゆえに、普段から実用万年筆として活躍させられるかというと難しく、自宅でしっかり腰を据えて書き物をしたいときに威力を発揮する万年筆。

パイロットの実用的万年筆といえばカスタム74、742、743、カスタムヘリテイジ91、92、912といったシリーズが挙げられる事が多く、それぞれが素晴らしい万年筆でありますが、私自身、パイロット社の実用万年筆としての最高峰は18金15号サイズのペン先がついた大型万年筆、カスタム845・カスタム槐・カスタム一位の木の3本だと感じています。

今回は、この3本をレビューしていきます。

スポンサーリンク

パイロットカスタム845・一位の木・槐


写真左からカスタム845、カスタム一位の木、カスタム槐。

この3本は定価50,000円(税抜き)と、パイロットの万年筆の中でも高価格帯のラインナップであり同社を代表する万年筆。

それぞれの軸素材が特徴的で、一般的なカスタムシリーズが樹脂軸であるのに対して、845はカスタムウルシと同じエボナイトに漆仕上げ。一位の木、槐は名前の通り一位(イチイ)・槐(エンジュ)という高級木材が使用されています。

また、ペン先は18金15号サイズで統一されており、本体の大きさも同じサイズで作られている兄弟分的立ち位置になります。

軸素材以外で違いがあるのがクリップとリング部分。
まずクリップは、カスタム845と一位の木が雨のしずくをモチーフにした「雨垂れクリップ」であるのに対して、カスタム槐は菊座クリップ(と言ったかな)。

雨垂れクリップはカスタム74・742・743・845・ウルシというカスタムシリーズ系統のラインで、菊座クリップは912などカスタムヘリテイジの系統で採用されているクリップです。一位の木と槐がどうしてクリップを分けたのかは定かではありませんが、同じサイズの木軸万年筆の中でも系統を分けた何らかの理由があるのかもしれませんね。


こちらがリング部分の違い。
845には、「PILOT MADE IN JAPAN ★★★CUSTOM845★★★」と書かれており、
一位の木と槐のリングには、「PILOT MADE IN JAPAN ★★★CUSTOM ART CRAFT★★★」と書かれています。

カスタム845・一位の木・槐
キャップを取ったところ。首軸は樹脂素材となっています。
こちらも一位の木や槐が使われてたら〜と一瞬思いましたが、普通に考えたらメンテナンス出来ませんね。首軸がインクだらけになってしまいます。

845の方はエボナイト+ウルシをそのまま首軸でも使えそうですが、845・一位の木・槐で機構を合わせた方が利便性も高いのでしょう。

使い回しできそうだし・・・

と思いきや、確認したところ845の首軸と一位の木・槐の首軸は違う仕様のようでした。

同じサイズに見えますが、845の首軸のネジ部分が一位の木・槐と比べて若干太くなっているようで、845の首軸を一位の木や槐に取り付けようとしてもはまりませんでした。逆に一位の木・槐の首軸を845に挿そうとするとスカスカです。


胴軸側のネジ部分も845はエボナイトの削り出しですが、一位の木・槐は樹脂に金属ネジとなっています。

こちらはキャップ側ですが、845のキャップの入り口のみ柔らかい素材が使われています。

写真で伝わるでしょうか。キャップ入り口から5mm程度が全体のツルツルした素材でない部分がありますが、この部分が柔らかいです。キャップを尻軸に取り付けたときに傷がつかないようにするための配慮なのでしょうね。

続いてペン先を見ていきましょう。
18金15号ペン先
18金15号サイズのペン先。サイズ感とともにバイカラーのペン先はそれだけで高級感を醸し出しています。

書き味として、ペン先のしなりは少なく程よく硬め、個人的には一番好きな柔らかさ。柔らかすぎてしなりやすいもの・ペン先が開きやすいものは楽しい反面、無駄に筆記線の強弱を付けたくなり力が入ってしまうので、あまり使わないようにしています。

しなりや開きは少ないものの、紙面への当たりは柔らかく一切の引っかかりがなく筆記ができます。

パイロットの万年筆は当たりハズレが少ないので、どこでも安心して購入ができます。


ペン先の字幅はF・M・BBの3種類を保有していますが、どの字幅においても極上の書き味が味わえる3本となっており、Fは習字用途に、Mは普段の筆記に、BBは宛名書きや純粋に筆記を楽しみたいときに使用しています。

それぞれ軸の概要をお話しいたします。

パイロットカスタム845

カスタム845
カスタム845の特徴はエボナイトを漆で仕上げた軸。エボナイト+漆仕上げの軸は手にしっとりと馴染み、どんな時でも安定したグリップ感を味わう事ができます。私の場合は特に習字で使用していますが、緊張で汗をかいてしまっても、エボナイト+漆軸は汗で滑るという事がなく自然と手に吸い付いてくれる感触があり重宝しています。

カスタム845に関しては下記でレビューしていますので、合わせてご覧ください。

【カスタム845レビュー】絶対的安心感!きちんとした文字を書きたいときの勝負万年筆
手帳に書き込む、思考を書き出す、メモを取る、純粋に筆記という行為を楽しむ、習字する、その時々の用途や気分に応じて万年筆を変える。 手帳に書き込むのであれば細字で固めの書き味のものが扱いやすいし、思考を書き出すのであれば太字で紙面へのあ...

パイロットカスタム一位の木

カスタム一位のき
縁起の良い木として知られる一位(イチイ)を採用するとともに、一位の木を圧縮する圧密加工を施し、強度を高めた木材を軸に使用した万年筆です。

一位の木
私が一位の木に感じたものは、1本1本の木目の繊細な美しさです。触った感触としてはサラサラ・ツルツルという表現が近いかと思いますが、製品としての加工がきちんと施されているといった感じがします。
見た感じ涼しさを感じさせる一位の木ですが、やはり木軸ならではの良さというのでしょうか。持つと温もりが感じられますし、使い込むほどに手になじんで艶や深みが増していくのが良いですね。
私の一位の木も購入した当時と比べると色艶が増してきたように感じます。

なお、カスタム一位の木は2018年に廃番となってしまい、現在では入手困難になっております。

パイロットカスタム槐

カスタム槐

カスタム一位の木と並び、縁起の良い「槐」をボディに使用した万年筆。
槐についての由来は、中国では、唐代に三本の槐を植えて宮廷高官である三公(太師・太傅、太保)の座位を示し、以来、権威と出世を象徴する樹とされてきました。
日本には仏教伝来の頃に薬木として渡来、槐という文字が示すように槐の木でお面を彫刻し鬼門に置き魔除けとしていた縁起木です。
のちに「延寿」という字が当てられ、長寿や・安産の御利益がある縁起のよい「幸せを呼ぶ樹」として珍重されてきました。
木質は硬く耐久性にすぐれ、美しく重厚な木目には独特の風情があり、古くから貴重な高級銘木として寺社建築の装飾や伝統工芸に用いられてきました。

カスタム槐

一位の木と比べると荒削りで力強さを感じるのが槐です。
触り心地もサラサラではなく、多少のざらつきもあり、シンプルに言えば工業加工された万年筆ではなく、木を持っているという感触で気に入っています。

コメント