パイロットの透明軸の万年筆、カスタムヘリテイジ92の紹介です。
ヘリテイジ92は、回転吸入機構を採用した万年筆ですボディ後部の尾栓を回すことでペン先からインクを吸い上げる機構を採用しボディ全体がインクタンクとなる為容量は1.2mlという大容量のインクを入れられます。また、スケルトンボディは、インク残量が一目で確認できるとともに吸入したインクの色でボディを彩ることもできるデザインです。
また14K 5号サイズのペン先が採用されておりますがパイロットの14K5号サイズは非常にバランスの取れたペン先。ペン先のしなりにより、万年筆ならではのなめらかな書き味と、文字に強弱のニュアンスを持たせることができます。
具体的にレビューいたします。
カスタムヘリテイジ92レビュー
カスタムヘリテイジシリーズについて
ヘリテイジシリーズはシンプルなベスト型のボディ。ロジウムで仕上げたペン先、クリップ・金輪などアクセントとなる部分をシルバー基調でまとめスタイリッシュで都会的な雰囲気を醸した万年筆。シリーズとしては、カスタムヘリテイジ912、91、92の3種類があります。
また、パイロット社にはヘリテイジのつかないカスタムシリーズ(74、742、743)がありますが、こちらはバランス型で、キャップ・尻軸の両端が丸くなっています。
バランス型とベスト型の違いと由来について
少し話が逸れますが、万年筆のデザインを表現する際に、バランス型とかベスト型と表現されるケースがあるので簡単にお話しします。バランス型というのは万年筆の両端が丸かったり尖っているものをよび、それに対して対してベスト型は平らになっているものを言います。
由来としては、
- バランス型の由来は、シェーファーが1920年代に発表した「シェーファー バランス」というモデルから。
- ベスト型の由来は、紳士がベストのポケットに入れていたのが平たい形状の万年筆だったため。
正直、「バランス」・「ベスト」という言葉から「丸い形状」・「平たい形状」だなんて想像もつきませんから個人的には好きな表現ではないのですが、万年筆の世界ではオーソドックスに使われる言葉なので覚えておくと良いかもしれません。
写真の上に写っているのがバランス型、下がベスト型になります。好みで好き嫌いはわかれると思います。
改めてヘリテイジシリーズのレビューに戻ります。
カスタムヘリテイジ912
ヘリテイジシリーズの中で最高級ラインナップにあたるヘリテイジ912は、91・92よりも一回り大きな14金10号サイズのペン先がついており、字幅も15種類のバリエーションから用途に対して選ぶことができます。SF・SFM・SMなどの軟調ペン先はもちろん、PO(ポスティング)FA(フォルカン)WA(ウェーバリー)SU(スタブ)など特殊ペン先も用意されています。
定価は20,000円です。
私もいくつか保有していますが、サイズ感、書き味とともに相性がよく、特にPOに関しては毎日の習字で使用しています。
カスタムヘリテイジ91
91はヘリテイジシリーズの中でエントリーモデルにあたり定価は12,000円、ペン先は9種類をラインアップし、本格的な万年筆のエントリーモデルとしても定評があります。
ペン先は14金5号サイズと912の14金10号と比べて一回り小さいペン先がついています。
デザイン・仕様のバランスが整っていますので、普段使いとしてはもちろん、新社会人になる方へのプレゼントにもお勧めしたい万年筆です。
カスタムヘリテイジ92
続いて92は、カスタム91の軸が透明になったもの。
ただ透明軸になっただけでなく、回転吸入機構を採用した万年筆。カスタム91、912はインクカートリッジやコンバーターからインクを供給しますが、92はボディ後部の尾栓を回すことでペン先からインクを吸い上げるタイプです。
ノンカラー、透明ブラック、透明ブルー、透明オレンジの4種類(透明オレンジは廃番になりました)が発売されており、ペン先はF・FM・M・Bの4種類。お値段はヘリテイジ91より3,000円上がって15,000円となります。
カスタムヘリテイジ92を使ってみて
私が保有している92のペン先はFですが、購入して以来、常に持ち歩いている一本です。なんと言っても92のスタイリッシュで透明な軸は使っていて楽しくなります。
書き心地も安定している為、普段使いで活用しようと思い購入登場はブルー系のインクを入れました。
とは言いつつ、ブルーだとせっかくの透明軸がさほど映えないので明るいピンクのインクを入れ替えてみたところ、華やかさのある雰囲気になりました。
それと透明軸はインクの残量が一目でわかるのも良いですね。
ヘリテイジ92の書き心地
さて、92の良さは透明軸である事だけではありません。パイロットの14金5号ペン先は書き味においても定評のあるペン先で、様々な万年筆を使ったあげくにカスタム74やヘリテイジ91の5号ペン先に落ち着く方もいる程。
個人的にはFという字幅が好きなので、ピンクはピンクとして使って普段使い用にもう1本ブルーブラックなどを入れた5号ペン先が欲しいなと考えてます。
適度に柔らかくたわむペン先と安定したインクフローで気持ちよく筆記し続けられます。
私、パイロットの万年筆は1番小さな3号サイズのペン先から30号サイズの特大ペン先の万年筆まで一通り保有しております。3号から30号まであってその中の5号というと小ぶりに感じられますが、実際に使ってみるとさほど小さいという印象はありません。
逆に5号サイズを使い続けた後に15サイズを使用するとかなり大きく感じますので、この辺りは小さいからダメとか大きいから良いなどという事はなく慣れの方が強いのだと感じます。※ペン先の大きさによる書き味の違いですが、一般的には大きなペン先の方が大きさを活かしたしやなかで弾力性に富んだ書き味が期待できます。
軸の持ち心地
さて透明でインクの映える軸が美しく基本性能の高いヘリテイジ92ですが、軸は樹脂となります。
樹脂は一般的な万年筆のほとんどに採用されている材料で、パイロットだとカスタム912や743といった2万円、3万円クラスの価格帯の万年筆でも採用されており、普段使いにはなんら問題はありません。
ただ汗をかきやすい方や暑かったり悪いコンディションだと正直滑るような感覚があります。この辺りはパイロットの各シリーズだけでなく、プラチナもセーラーも海外製の万年筆でもどの万年筆でも同じ事が言えます。
解消できる軸を探そうとするとエボナイト軸や漆軸など一気に金額が跳ね上がってしまいますから落とし所を見つけるしかありませんね。
まとめ
スケルトンボディでインクの色を楽しめる、大容量のインクタンク、そしてカスタムシリーズならではの素晴らしい書き味と、デザイン・実用・書き味のバランスの取れた万年筆だと感じます。
定価15,000円と、本格的な金ペンの中では購入しやすい価格帯でありつつ、これだけのパフォーマンスを提供してくれるのはパイロット社ならではですね。普段使いの1本としてぜひおすすめしたい万年筆です。
以上、カスタムヘリテイジ92のレビューとさせていただきます。
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